いいお店には うまい酒と いい話がある おやじ

アイツの人生酒場

アイツ、大手メーカーに行ったんだって。

今夜のお話

アイツ、大手メーカーに行ったんだって。

今夜のお客さん アイツの高校時代の友人

友人の“アイツ“とは工業高校で出会い、今も年1回は飲みに行く関係。どんどん自分の道を切り拓いていくアイツを尊敬しながら、どこかうらやましくも思っている。30歳手前でプチ自分探し中。

1杯目

大手メーカーに行って、けっこう稼いでるんだって。

友人
ねえ、大将。
大将はさ、
なんで居酒屋やろうと
思ったんスか?
大将
お、突然だな。
なんだ。オレの人生に
興味あるってか。
友人
いやなんか、
みんななんのために
生きてんのかなって。
大将
おいおい、どうした。
もう酔ったのかい?
友人
さっき、1軒目ね、
高校のときのツレと
久しぶりに飲んだんスよ。
そしたら、派遣社員から
誰もが知ってる超大手企業の
社員になってて。

給料もけっこうもらってて。
大将
若いのに
すげぇじゃねぇか。
友人
昔は一緒にバカやってたのに。
なーんか遠くに
行っちゃったみたいで。
大将
ははん、うらやましくもあり、
自分はどうかと振り返る
ところもあり…ってとこか。
友人
そゆこと。
で、オヤジさんはなんで
この店やってんスか?
大将
オレか?
そりゃ好きだからだよ。
友人
そう、アイツも言ってたんだよ。
好きだったら、
何だってやれる、
好きだから頑張れるって。
大将
そういうもんさ。
友人
そんなもんスかね。
好きだからってだけで、
大企業に行けるもん?
好きなだけで給料上がるもん?
2杯目

気づいたら、いろんなことにチャレンジしててさ。

大将
その友達は、
何が好きなんだ?
友人
車っスね。
オレら工業高校で
一緒だったんだけど、
アイツは昔から
スポーツカーマニアでさ。
大将
車か、憧れるよな。
友人
卒業して地元じゃ有名な
化学メーカーに入ったんだけど
すぐ辞めてさ。
もったいねぇって言ったんスよ。
でもそれから、派遣で
車関係の仕事をはじめて。
大将
やっぱり好きなことしたい、
って思ったんだな。
友人
そうそう、そんで、
「いつかは憧れの車を買うんだ」
「思う存分、イジリまくるんだ」
って言ってて。
大将
そいつを買うために
頑張るって目標ができたんだ。
友人
1年に1〜2回は会ってたんだけど、そのたびに新しい勉強してたりして。
で、さっき聞いたら、
大手の自動車メーカーに行ける
チャンスがあって、手を挙げたんだって。
大将
すげぇじゃねぇか。
「好き」の馬力はあなどれんぞぉ。
友人
なんか、楽しそうなんスよ。
全然ブレないっていうか。
大将
好きなものや手に入れたいものが
自分でわかってるやつは、
やっぱり強いもんさ。
原動力が自分の中にあって、
目標まで一直線だからな。
3杯目

アイツは好きなことがあるけど、オレにはなくてさ。

友人
目標と原動力があるから
仕事がうまくいってる、
ってことスか?
大将
そうだな。
車が好きだから仕事が楽しいし、
好きな車を買うために
頑張れたんだろ。
友人
すげぇなぁ。
オヤジさんも、
今の仕事好きなんスよね?
大将
もちろんだ。
オレはこの店と、
この店に来るお客さんが大好き。
友人
いいよな。
仕事につながる
好きなことって
オレにはわからないよ。
大将
まずは動いてみる、
ってのもいいと思うぜ。
友人
どういうことスか?
大将
アイツだって、勉強したり
自分から手を挙げたり
してたんだろう?
目標がないときは、
それを見つけるために
動いてみるってことも
大事じゃないかな。
友人
そっか。
まずは行動してみる、
ってのもありなんスね。
大将
そうすることで
自分の好きなことや
目標が見つかることだって
きっとあるぜ。
友人
そうスね!
そうと決まったら、アイツに
もう一度話を聞いてみよ。
「あっ、もしもし〜」…
大将
おいおい、急だねぇ。
ま、その真っすぐさがあれば、
きっとうまくいくさ。