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アイツの人生酒場

あの先輩、毎年昇級してるんだって。

今夜のお話

あの先輩、毎年昇級してるんだって。

今夜のお客さん あの人の会社の後輩

半導体工場で働くフィールドエンジニア。女性が少ない職場だが、そこで活躍するとある憧れの先輩エンジニアのようになりたいと日夜努力している。最近の目標は、ひとりでもみんなでも楽しめる趣味を見つけること。

1杯目

若手のころから、優秀なエンジニアだったんだって。

大将
いらっしゃい、こんばんは。
初めましてかな?仕事帰りかい?
後輩
はい!仕事の帰りに、
いつも前を通ってて。
ずっと気になっていた
お店だったんです。
大将
そりゃありがとう。
ゴキゲンだねぇ。
後輩
はい。今日いいことが
あったんで、ひとりで
飲みに来ちゃおうかなって。
大将
お、いいね。どうしたんだい。
後輩
私エンジニアなんですけど、
実は今日、昇級したんです!
大将
すげぇじゃねぇか。おめでとう!
今日はパーティだな。
後輩
そうなんです!乾杯!
昇級すれば給料も上がるので、
さらにスキルを身につけて
もっと頑張ろうって思います!
大将
ストイックだねぇ。
次の目標はどうするの。
後輩
職場に、大好きな
女性の先輩がいるんです。
お客様にも認められてて、
みんなすごいって。私も
その先輩みたいになりたくて。
大将
憧れの先輩ってやつだ。
後輩
憧れどころか!
若手からしたら
伝説みたいな人ですよ!
大将
伝説か。そりゃすごい。
後輩
私たち若手にも
優しいんですけど、
実務になるとキビキビして
なんでもできるっていうか。
大将
なるほど、人としても
スキルのほうも尊敬できると。
後輩
女性エンジニアが
もっと少なかったころから
優秀だったって。
大将
ああ、昔は今よりもっと女性の
エンジニアって少なかったな。
後輩
優秀な人は若手のころから
優秀なんだなって。私も
今回の昇級くらいで喜んでちゃ
ダメかな。まだまだですね!
2杯目

自分ひとりでやらなきゃって、思いすぎちゃったんだって。

大将
なるほど。その先輩の
「デキる」エピソードが
語り継がれてるわけだな?
後輩
デキるだけじゃなく
謙虚なんです。
周りのサポートあってこそだって、
いつも言ってて。
大将
大事なことだな。
後輩
先輩は、新人のころ
それに気づいたんですって。
大将
ほう。先輩にとって何か
大事な出来事でもあったかな。
後輩
昔の先輩は、仕事は、
自分の力で頑張らなきゃって
思ってたらしいんです。
自分で考えて、自分で動いて、
で、成果をあげる。
大将
うんうん。自分で考えるのは
大事なことだよな。だから
優秀だって言われてたんだろ?
後輩
でも、だんだん自分を
追い込んじゃったというか。
私がなんとかしなきゃ、
みたいに思っちゃってた時期が
あったんですって。
大将
責任感が強いタイプ
だったのかもなぁ。
後輩
でもそれである日、初めての
作業で、わからないことを
言い出せなくて、
ずっと黙ってたんだって。
大将
ほう、それで?
後輩
そしたら上司から悩んでるのを
スパッと見抜かれたとか。
「顔に悩んでるの全部出てるぞ」
って言われたんだって。
大将
気づいてくれる上司が
いてよかったなぁ。
後輩
なんでも自分でやろうとするな。
周りのサポートにもっと気づけ。
そして周りをちゃんと頼れ。
そう言われたらしいんです。
3杯目

仕事って、チームでするのも楽しいものなんだって。

大将
いい話じゃねぇか。
その先輩は、ひとりじゃなく、
チームで協力することを
学んだんだよ。
後輩
ひとりで頑張るのって、
よくないことなんですか?
大将
ダメじゃないんだけどな。
ひとりでやらなきゃって
思ってるときほど、周りが
助けてくれていることにも
気づきにくくなるってことさ。
後輩
今回の私の昇級も、
周りのサポートが
あったからかもしれません。
大将
もちろん自分が
頑張ったってのもあるはずさ。
でも周りの人の助けも
忘れないでねってこと。
後輩
なるほどぉ。
大将
逆に周りの人が昇級したら、
その人の成長には、自分の
サポートが活きたのかも
しれねぇぞ。
後輩
そう思うと、チームで
仕事するのってちょっと
楽しくなりますね。
サポートし合うの、大事なんだ。
大将
そうだな。
現に今、その先輩に
助けてもらってんだろ?
次は自分が、後輩をサポートする
番になっていくんだ。
後輩
そうですね!
私も毎年昇級し続けて、
職場のレジェンドになります!
大将
はは!レジェンドか。
まあ、10年20年、
職場で語り継がれてたら、
そりゃ面白いかもしれねぇな。