いいお店には うまい酒と いい話がある おやじ

アイツの人生酒場

アイツ、趣味も仕事も波に乗ってるんだって。

今夜のお話

アイツ、趣味も仕事も波に乗ってるんだって。

今夜のお客さん アイツの行きつけの
ショップオーナー

“アイツ”が通っていた海の近くで、サーフショップを営むオーナー。アイツが毎日のように海に通うため、サーフィンから仕事の話までなんでも気軽に話す仲になった。

1杯目

前は派遣社員だったのに、今じゃ会社の役員だって。

オーナー
よう、大将。
やってるかい?
大将
おう、久しぶりじゃないか。
好きなところ座ってくれよ。
どうだい、最近の海のほうは?
オーナー
シーズンはこれからだけど、
今年も忙しくなりそうだよ。
大将
それはよかったな。
数年前は外出自粛とかで
ずいぶん客足も遠のいてたもんな。
オーナー
お互いつらかったよな。
今は海に人が戻ってきたし、
逆に都会を離れて
海のそばで暮らすやつも
増えてきたんだよ。
大将
働き方もずいぶん
自由になったみたいだよな。
オーナー
戻ってきたといえばよ、
この前、面白いやつに
ひさびさに会ったんだよ。
大将
面白いやつ?
サーファーかい?
オーナー
そうそう。
もともと、週5で海に入るような
根っからの波乗りだった
んだけどな。この前会ったら、
派遣社員から会社の役員に
なっててよ。
2杯目

趣味で選んだ仕事なのに、だんだん本気になったんだって。

大将
派遣社員から、その会社の
役員にまでなったってことかい?
オーナー
そうなんだよ。アイツの
経歴ってのが面白くてさ。
前は東京で仕事を転々としてた
みたいなんだけど、サーフィン
したくて移住してきてさ。
大将
趣味で住む場所を選んだんだな。
オーナー
たまたま求人雑誌を見てたら、
海の近くの工場が載ってた
みたいでさ。「ここで働けば、
いつでも海に入れるじゃん!」って。
大将
よっぽどサーフィンが好き
だったんだな。そしたら仕事は
二の次だったんじゃないのか?
オーナー
それがさ。
サーフィンもよかったんだけど、
意外にもその工場の仕事が
自分に合ってたんだってよ。
大将
へぇ。サーフィンしたくて
決めた仕事なのにかい?
オーナー
そうそう。
最初はただ働いてたみたい
なんだけど、数人チームの
リーダーになってからは
やけに楽しくなったって。
大将
任されたことが、だんだんと
やりがいになったのかね。
オーナー
俺の店にもよく来てたんだけどさ、
初めて仕事が楽しいと思った、
ってよく言ってたよ。
大将
でも、そこからどうやって
役員にまでなったんだい?
オーナー
役員に立候補できる制度が
その会社にあるらしくてよ。
いろんな人から背中を押されて、
頑張ってチャレンジしてみたら
見事に任命されたんだってさ。
大将
なるほどね。波に乗りに来たら、
仕事のほうが波に乗ったわけね。
オーナー
さすが大将。
こいつは一本取られたな。
3杯目

仕事だって、思いがけない波に出会えることがあるんだって。

オーナー
しかし人生ってもんは、
つくづく先が読めないね。
サーフィンのために来たのに、
仕事のほうが楽しくなるなんてさ。
大将
先なんて分からないさ。
それこそオレたちの時代は、
いい大学に入って、大きな会社に
入るのが幸せなんて言われたけど、
今じゃまったく違うだろ。
オーナー
今はどんな企業だって、
いつなにが起こるか
わからない時代だしな。
大将
人によって正解が違うからこそ
思いもよらない道がどっかに
あるんじゃねえか。
オーナー
そうか、アイツも言ってたな。
仕事もサーフィンも一緒で、
思いがけず最高の波に出会える
ことがある、って。
大将
そのためにはいろいろと
動き続けなきゃな。
ずっと浜辺で待ってても
しょうがないだろ。
オーナー
さすが大将だな。
いい話ができたよ。今度は
こっちに波乗りに来てくれよ。
大将
よしてくれよ。
オレはカナヅチなんだ。